トータルリターン通知制度は、投資家各々が保有している投資信託について、実際に受け取った分配金額を含めた損益を把握できるよう、2014年12月より導入された通知制度です。
証券会社等の販売会社が投資信託を保有している顧客に対し、分配金を含む投資期間全体の累積損益を書面にて通知します。通知書は「投資信託トータルリターン通知書」と呼ばれ、毎年末の最終営業日を算出基準日として年1回交付されます。
この通知書は、販売会社が作成して、投資家に年1回以上通知することが、日本証券業協会の規則(協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則)により義務付けられているものです。なお、2014年12月より前に購入した投資信託に関してはこの通知制度の義務の対象ではありません。
また、オンライン証券などでは、現時点での評価金額を元に、オンラインでトータルリターンを確認できるようになっています。
なぜトータルリターン通知制度が開始されたのか #
投資信託では、月報や運用報告書において、月報であれば該当する月の騰落率が、運用報告書であれば、該当する決算時の騰落率が記載されます。これにより、各投資信託の運用成績を知ることや他の投資信託と比較することができます。しかし、これらの報告書等では、投資信託を保有している投資家は、自分が実際に受け取った分配金額を含めた自身の損益を知ることはできません。そこで、各投資家が保有している投資信託について、実際に受け取った分配金額を含めた各人の損益を把握できるように導入されたのが、トータルリターン通知制度です。
トータルリターンとは #
トータルリターン通知制度におけるトータルリターンは、「現在の評価金額」、「累計解約金額(信託財産留保額・信託報酬差引後)」、「累計受取分配金額(税引後)」の合計額から「累計買付金額(買付手数料・買付手数料に係る消費税)」を差し引いた金額で、販売会社における投資信託の新規買付時から算出基準日までの全期間を通じたトータルの損益金額です。
トータルリターン通知の表記例:
計算基準日:令和7年1月31日
投資信託の名称 | 現在の評価金額(円)保有数量(A) | 基準価額 (円) | 累計受取分配金額(円)(B) | 累計解約金額(円)(C) |
●●ファンド | 206,165146,559口 | 14,067 | 0 | 0 |
累計買付金額(D) | トータルリターン=(A)+(B)+(C)−(D) | |||
200,000 | +6,165 |
- 計算基準日=現在保有する投資信託のトータルリターンの算出の基準日です。
- 投資信託の名称(●●ファンド)=保有している投資信託(ファンド)の名称
- 現在の評価金額(円)=計算基準日における評価金額
- 現在の保有数量=計算基準日における保有口数
- 基準価額=計算基準日における基準価額
- 累計受取分配金=買付け時から計算基準日までの期間内に受け取った分配金の合計額(税引後)
- 累計解約金額=買付け時から計算基準日までの期間中に売却した金額
- 累計買付金額=当初買付け時から計算基準日までの期間内に同じ投資信託を買付けた合計金額
上記の例では、トータルリターンは、(206,165円+0円+0円)−200,000円で6,165円となります。
トータルリターン通知制度のまとめ #
トータルリターン通知制度は、投資信託の保有者が分配金を含む累積損益を把握できるよう、2014年12月に導入された制度です。証券会社などが年1回、顧客に「トータルリターン通知書」を交付し、現在の評価金額や累計分配金、累計買付金額などを基にした損益を知らせます。この制度は、従来の運用報告書では把握できなかった個別投資家の実際の損益を可視化することを目的としています。分配金や解約金を含めた総合的な損益評価が可能になることで、投資判断の材料として活用されています。