ETFも上場廃止になる #
日本国内に上場しているETFの運用期間(信託期間)は全て無期限です。基本的には償還されることなく、運用が継続されることを意味しています。そのため、運用期間という面で言うと、ETFは長期投資に適した投資商品であると言えます。
しかし、株式と同様に、ETFも上場廃止になることがあます。上場廃止になると、ETFは繰上償還され、投資家が想定していた長期運用は中止せざるをえなくなってしまいます。これまでに、80本ETFが上場廃止になっています(2024年10月現在)。
上場廃止規定 #
ETFはどのような場合に上場廃止になるのでしょうか。
ETFの上場廃止基準は東京証券取引所「有価証券上場規程」において、定められています。例えば、次の項目が含まれています。(2024年10月現在)
- ETFの管理会社の金融商品取引業の登録が失効した場合
- ETFの管理会社が金融商品取引業の登録又は登録金融機関業務を 取り消された場合
- ETFの管理会社が投資運用業を行う者でなくなった場合
- ETFの管理会社が社団法人投資信託協会の会員でなくなった場合
- 上場指標連動型ETFに係る信託受託者が営業の免許又は信託業務を営むことについての認可を取り消された場合
- 上場指標連動型ETFが、投資信託財産等の一口あたりの純資産額の変動率を特定の指標の変動率に一致させるよう運用する旨の定めがなくなる場合
- 上場指標連動型ETFの一口あたりの純資産額と特定の指標の相関係数が0.9 未満となった場合において、1 年以内に0.9以上とならないとき
- 投資信託契約の期間の定めが設けられる場合
- 管理会社から上場廃止申請が行なわれたとき
上場廃止は、東京証券取引所が上場規定に基づいて決定されますが、その多くの上場廃止は、「投資信託約款において投資信託契約の期間の定めが設けられる変更が行われたため」に該当したものです。これはどういう意味でしょうか。
投資信託契約の期間の定めが設けられる変更 #
ETFは、信託期間が無期限の商品です。それが約款を変更して期間を定めるのは、償還に向けたプロセスの一環です。管理会社が繰上償還を決定し、繰上償還に向けて約款を変更して、信託期限を設けることで上場廃止の規定「投資信託契約の期間の定めが設けられる場合」に該当することになり、上場廃止となるわけです。
管理会社がETFの信託期限を設けるのは、繰上償還するためです。では、なぜ、繰上償還を決め、信託期限を定めるに至ってしまうのでしょうか。
繰上償還を決める理由 #
管理会社が繰上償還を決める理由はさまざまですが、その最も多い理由は、「資産規模の減少」です。
資産規模が小さくなると、安定的な運用が困難な状況になります。指数連動型のETFでは、ファンドの基準価額を対象指標に連動させる運用が行えなくなります。その状態まで資産規模が小さくなり、かつ、今後も状況の改善が見込みにくいと管理会社が判断した場合、管理会社は繰上償還することを決定します。これは非上場の投資信託でも共通の繰上償還の要因です。
上場廃止・繰上償還までのプロセス #
資産規模の減少などを理由に繰上償還を決定すると、管理会社は、書面決議を行います。これは、受益者に書面を送付し、繰上償還することに対して意義がないかを確認するものです。
繰上償還について、賛成する受益者が3分の2以上となった場合は、繰上償還が確定され、同時に、約款を変更して、それまで無期限とされていた信託期間を特定の日に変更します。これにより、上場廃止規定の「投資信託契約の期間の定めが設けられる場合」に該当することになり、取引所において、上場廃止の決定が行われます。それを順に追うと次のようになります。
- 資産規模の減少などの要因が発生
- 管理会社が繰り上げ償還を決定
- 書面決議手続きの実施
- 賛成多数(3分の2以上の賛成)・・・賛成が3分の2以上にならなかった場合は、繰上償還・上場廃止にはなりません。
- 繰上償還の確定・約款変更・・・投資信託契約の期間の定めを設定
- 東京証券取引所に上場廃止申請・・・申請を受けた東京証券取引所は、確認作業に入ります。
- 管理銘柄(確認中)への指定
- 整理銘柄への指定・・・期間は1ヶ月間で、これが取引所で取引できる最後の期間となります。
- 東京証券取引所での最終日
- 上場廃止
- 繰上償還・・・上場廃止になったETFは信託約款の規定に基づき、受託者と合意の上で繰上げ償還(信託終了日)となります。
投資家への影響 #
繰上償還や上場廃止が発生した場合、投資家は売却するか買取請求を行い、現金化せざるを得なくなります。市場の状況によっては損失を被る可能性もあり、特に長期保有を目的としてETFを購入していた投資家にとっては、計画が頓挫することになります。
残念ながら、新規に上場されるETFについては、どのETFが繰上償還される可能性が高いかを事前に判断することは困難です。しかし、既に上場しているETFに関しては、購入前に純資産総額の規模や上場口数の推移、売買高、基準価額とベンチマークの乖離、およびその解消までの期間など、総合的に検討することが重要です。
ETFの上場廃止まとめ
ETFの上場廃止は、資産規模の減少などで安定運用が難しくなった場合、管理会社が繰上償還を決定することで発生します。上場廃止により投資家は現金化を余儀なくされ、長期運用計画が中断するリスクがあります。事前に純資産規模や売買高などを確認することで、上場廃止リスクのあるETFを避けるのが重要です。