クロスオーバーファンドとは? #
クロスオーバーファンドとは、未公開株式(プライベートエクイティ)と公開株式(上場株式)の両方に投資する投資信託のことです。通常の投資信託が公開市場(上場株式など)を主な投資対象とするのに対し、クロスオーバーファンドは公開市場と非公開市場の両方を対象とする点に特徴があります。投資の世界では、未上場株と上場株をまたいで投資する手法をクロスオーバー投資と呼びます。
これまで日本では、投資信託に未上場株式を組み入れることが認められていませんでした。しかし、2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義実行計画」(内閣府公式ページ)に基づき、スタートアップ企業への円滑な資金供給と投資家への多様な投資機会の提供を目的とした規制緩和が進められました。この計画の一環として、投資信託への未上場株式の組入れに関する評価方法や流動性リスクへの対応が検討されました。
その後、投資信託協会は2024年2月15日に自主規制ルールを変更し、公募投資信託において純資産総額の15%を上限として未上場株式を組み入れることが可能となりました。
この新たなルール変更は、日本の投資信託市場において成長分野への投資機会を広げると同時に、スタートアップ企業の資金調達手段の多様化を促進する重要なステップとなります。
クロスオーバーファンドの特徴 #
1. 未公開企業への投資
成長が見込まれるスタートアップや後期ステージの未公開企業に投資し、IPO後の価値上昇を狙います。
2. 公開企業への投資
すでに上場している企業の株式に投資し、株価の値上がりや配当による利益を目指します。
クロスオーバーファンドのメリット #
高い成長性・・・未公開企業への投資により、公開市場では得られない成長機会を取り込める可能性があります。
分散投資・・・公開市場と非公開市場に投資することで、異なるリスク・リターン特性を持つ資産に分散投資できます。
クロスオーバーファンドのデメリット・リスク #
流動性リスク・・・未公開株式は自由に売却しづらいため、短期的に資金を回収することが難しい場合があります。
高リスク・高リターン・・・未公開企業への投資は成長が期待される一方、企業の倒産や事業失敗のリスクも伴います。
評価の不透明さ・・・非公開企業は情報が限られており、株式に市場価格がないため、評価が難しく、ファンドの純資産価値(NAV)が不安定になる可能性があります。
クロスオーバーファンドが注目される理由 #
近年、未公開企業の成長スピードが速く、IPO前の段階で高い企業価値を達成するケースが増えています。そのため、IPO前後の成長を取り込めるクロスオーバーファンドは、投資家から注目されるようになっています。
日本ではまだ少数ですが、海外では多くの資産運用会社やヘッジファンドがクロスオーバー投資戦略を導入しており、特にスタートアップが多いアメリカ市場で盛んです。
クロスオーバーファンド(投資信託)の例: #
ひふみクロスオーバーpro #
「ひふみクロスオーバーpro」は、未上場株式を含むクロスオーバーファンドで、2024年9月12日に設定されました。日本の自主規制ルール変更により、公募投資信託で未上場株を最大15%まで組み入れ可能となったことを受けて誕生しました。レイターステージの未上場企業への投資とIPO後の株式保有を通じ、成長支援と「死の谷」解消を目指しています。ファンドマネージャーは藤野英人氏。
設定日:2024年9月12日
運用会社:レオス・キャピタルワークス株式会社
fundnote IPOクロスオーバーファンド(愛称:匠のファンド あけぼの) #
fundnote株式会社が運用するこのファンドは、上場後5年以内の中小型株と未上場株のうち2年以内に上場を予定する銘柄を投資対象とするアクティブ型の公募投資信託です。2024年12月13日より運用が開始されました。ファンドマネージャーは川合直也氏。
設定日:2024年12月13日
運用会社:fundnote株式会社
クロスオーバーファンドのまとめ #
クロスオーバーファンドは、未公開株式と公開株式の両方に投資する投資信託です。2024年の規制緩和により、日本でも純資産総額の15%を上限に未上場株式を組み入れることが可能になりました。この解禁は、スタートアップ支援と投資機会の拡大を目的としています。一方で、流動性リスクや評価の不透明さといった課題も伴います。