ゴールドマン・サックスBRICsファンド撤退のニュースの衝撃


2015年11月9日、米国の大手証券会社ゴールドマン・サックスがBRICsファンドから撤退するというニュースが金融市場を驚かせました。ゴールドマン・サックスは「BRICs」の名付け親であり、2004年頃から始まったBRICsファンドブームの火付け役とも言える存在であったためです。

BRICsは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字をとったもので、BRICsファンドは、これら4カ国に投資するファンドのことです。このBRICsという言葉は、ゴールドマン・サックスが2003年10月に発表した「Dreaming with BRICs: The Path to 2050」と題するレポートの中で初めて使った言葉です。

同レポートは、ブラジル、ロシア、インド、中国経済は今後最も急速に成長を遂げる経済であるとした上で、今後40年以内に、BRICs経済は、米ドル・ベースでG6の経済よりも大きくなる可能性がある(2004年では約15%程度)と予測するなど、今後数十年間に世界経済のバランスが現在とは大きく変化したものとなることを示唆するものであったことから、世界的にBRICs投資が注目され、日本でもBRICsの4カ国に分散投資するファンド、BRICsの構成国の内の一カ国あるいは数カ国に的を絞って投資するファンドなど、さまざまなタイプのBRICsファンドが設定されました。

そのBRICsの生みの親であるそのゴールドマン・サックスが、2006年6月30日に米国で設定したBRICsファンド「Goldman Sachs BRIC Fund」を、2015年10月23日付けで、同社の新興市場株式ファンド「Goldman Sachs Emerging Markets Equity Fund」に統合したのです。

ゴールドマン・サックスは、2015年9月17日にSEC(米国証券取引委員会)に提出した届出の中で、統合の理由について、BRICsファンドの資産が近い将来において大きく成長することが見込めないこと、ファンドの統合が、長期で見れば、総経費の低下という形でよりよい効率化を実現できる可能性を拡大すること、BRICsファンドは償還されると課税対象になるが、それよりもファンドを統合することで、より分散された外国及び新興国市場に投資するファンドに投資する機会が提供される方が投資家にとっては好ましいこと、などを挙げています。詳細はこちらの届出(SEC FORM N-14)でご確認下さい。

では、日本において設定されたBRICsファンドの現状はどうなっているのでしょうか。

2008年に設定された「JPM・BRICS5・ファンド(3ヶ月決算型)」が2014年に繰上償還されていますが、他のファンドは運用が続いています。5年トータルリターンでは、-2%~+2%程度、純資産総額は1億円~280億円程度となっています。

ファンド名 設定日 信託期間 運用会社 基準価額
2015/11/10現在
純資産総額
5
トータルリターン(年率)
HSBC BRICs オープン 2005/09/30 無期限 HSBC 11,273 円 97 .14億円 -1.63%
JPM・BRICS5・ファンド 2005/12/28 無期限 J.Pモルガン 18,808 円 286 .96億円 +2.81%
シュローダーBRICS株式ファンド 2006/01/31 無期限 シュローダー 6,044 円 145 .98億円 +1.76%
日興BRICs株式ファンド 2006/03/01 2016/02/26 日興 11,769 円 130 .15億円 -0.72%
HSBC新BRICsファンド 2006/06/30 無期限 HSBC 10,208 円 67 .15億円 -0.22%
グローバル・アンブレラ UBS BRIC 2007/12/19 2017/12/05 UBS 6,753 円 34 .91億円 +0.50%
GS BRICs 株式ファンド 2008/01/21 2018/05/14 ゴールドマン・サックス 7,994 円 28 .52億円 +1.45%
JPM・BRICS5・ファンド(3ヶ月決算型) 2008/03/31 無期限 J.Pモルガン 2014 年7月 15 日に繰上償還    
BRICsエクイティ・ファンド  2008/04/23 2018/04/23 ゴールドマン・サックス 7,887 円 9 .17億円 +1.05%
ダイワBRICSリターンズ・ファンド 2009/02/13 2018/02/20 大和投信 12,513 円 0 .93億円 -2.04%

(データ出所:投資信託協会 投信総合検索ライブラリー)

 

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが運用する「GS BRICs 株式ファンド」と「BRICsエクイティ・ファンド」は、ルクセンブルク籍の外国投資証券(米ドル建て) 「ゴールドマン・サックス・ファンズ S.I.C.A.V ー ゴールドマン・サックスBRICsポートフォリオ」に投資するファンド・オブ・ファンズですが、このルクセンブルグ籍のファンドは、今回米国において「Goldman Sachs Emerging Markets Equity Fund」に統合された「Goldman Sachs BRIC Fund」とは別のファンドです。

なお、「BRICsエクイティ・ファンド」は、2008年4月に設定された「BRICs株式インデックス・ファンド」が2015年4月の約款変更によりアクティブ運用ファンドに変更になり、同時にファンド名も変更されたものです。