2015年11月18日に、フランスの独立系運用会社であるコムジェスト・グループ(Comgest Group)の日本法人日本コムジェスト株式会社がセミナー「エマージング市場株式の展望~コムジェストの株式運用の魅力~」を開催しました。
コムジェストは1985年にパリに設立された独立系の資産運用会社です。設立以来、役職員が株主となっています。設立当時のフランスにおいて、大手金融機関に属さない独立系運用会社はめずらしい存在であったということです。現在、パリ、ダブリン、香港、東京、シンガポールに拠点があり、社員数は約120人で、このうち39人がアナリストやポートフォリオ・マネージャーなどの専門職です。また、社員の国籍は20カ国以上にまたがっています。
運用資産は2015年6月末現在で約216億ユーロ(2.96兆円)で、そのうち約132億ユーロがエマージング市場で運用され、先進国が約60億ユーロ、グローバル市場が約24億ユーロと、エマージング市場での運用資産が約6割を占めています。コムジェストの顧客ベースは、年金基金(ソブリン・ウェルス・ファンドを含む)が42%と最も多く、次いで銀行/金融機関17%、アセットマネジメント12%、保険会社12%と続きます。
コムジェスト・グループのCEOヴァンサン・ストラウス氏は、長期的視点での運用、独立性、規律の順守、インターナショナルである点をコムジェストの特徴として挙げています。長期的視点での運用に関して、コムジェストは「高い投下資本利益率を伴った持続的なEPS成長は、優れたリターンにつながる」を信念としており、株式の保有期間は平均すると3~5年です。また、ESG(環境、社会及び企業統治)調査・分析を導入している点も、他に先駆けた特徴であると言えます。
コムジェストは、日本の投資家にはあまり馴染みがないかもしれませんが、主に独立系の投資信託の運用会社がファンド・オブ・ファンズにおいてコムジェストのファンドを組み入れています。また、適格機関投資家様向けの私募ファンドの運用も行なっています。
コムジェストのファンドを組み入れている投資信託
コムジェスト・グロース・アメリカ(アイルランド籍USドル建外国投資法人)
- コドモファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- おふくろファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- かいたくファンド(クローバー・アセットマネジメント)
ニッポンコムジェスト・ヨーロッパ・ファンドSA(適格機関投資家限定)
- コドモファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- らくちんファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- かいたくファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)
- ありがとうファンド(ありがとう投信)
ニッポンコムジェスト・エマージングマーケッツ・ファンドSA(適格機関投資家限定)
- セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)
- おふくろファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- らくちんファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- かいたくファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- ありがとうファンド(ありがとう投信)
- ユニオンファンド(ユニオン投信)
コムジェストの強みである新興市場株式の運用について、パフォーマンスを見ると、次のように長期にわたり参考指数であるMSCI Emerging Markets-NR(円換算)をアウトパフォームしていることがわかります。ヴァンサン・ストラウス氏によると、ファンドは21年にわたり参考指数をアウトパフォームしてきたということです。
「グローバル・エマージング市場株式戦略代表口座」のパフォーマンス(%)
四半期 | 年初来 | 過去1年 | 過去3年(年率) | 過去5年(年率) | 過去10年(年率) | 設定来(年率) | |
ファンド(代表口座) | -18.60 | -12.23 | -3.55 | 16.11 | 7.58 | 8.71 | 12.67 |
参考指数 | -19.64 | -15.57 | -11.87 | 9.38 | 3.63 | 4.81 | 8.58 |
(セミナー配布資料より)
今回のセミナーの主題であるエマージング市場株式の展望についてのストラウス氏の主張は次のとおりです。
- 異例な金融政策のもと世界規模で資産価値は割高な水準になっている。すべての資産のバリュエーションの根幹となる長期債は最も割高でかつ非流動的になっている。
- 新興国に関する悪材料は周知のものとなっており、先進国との比較においても資産価値にかなり織り込まれてきている。相対バリュエーションは、ここ10年来最も低い水準にあり、通貨安も進んでいる。
- 主要なリスクとして、信用サイクルの長期化を受け、過去最高水準に達している新興国の負債があげられる。なお、この「長期化による”追い風”」が将来的にGDPやEPSの成長を促進するわけではない。
- 構造改革というテーマでは、中国、インド、メキシコでは一定の信用が意識されており、景気や企業がすでに循環的な調整をはたしていることの兆候を示している。収益予測は5年間におよぶ下方修正を経て低い水準となっている。
- 投資ユニバースは、中国A株市場、サウジアラビア、イラン、ベトナム等の株式市場を軸に拡大中である。
- コムジェストのエマージング株式ポートフォリオは過去の平均と比較すると割高な水準、かつEPS成長率は低いものの、これはコムジェストの保守的なコンセンサス見通しに基づいている。