世界の知性が支える運用会社
ノーベル経済学賞を受賞した学者たちが取締役やコンサルタント等として名を連ね、彼らによる優れたファイナンスのアイデアを現実のものとして運用に生かす運用会社があります。それが、米国テキサス州オースティンに本拠地を置くディメンショナル・ファンド・アドバイザーズです。
ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズは、1981年にシカゴ大学ビジネススクールの同級生だったデービッド・ブース氏(現Executive Chairman)とレックス・シンクフィールド氏によって創設されました。
同社では、近代ファイナンスの父と称されるシカゴ大学のユージン・ファーマ教授をはじめ、ロバート・マートン氏、マイロン・ショールズ氏の3名のノーベル経済学賞を受賞した経済学者や世界的に著名な学術研究者がコンサルタントや取締役等を務めています。同じくノーベル経済学賞を1990年に受賞したマートン・ミラー氏(2000年没)も、同社の独立取締役でした。ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズは、彼らの高度な学術的研究を運用に活用していますが、ディメンショナルのリサーチ・チームが彼らとは別の学術的研究から得た運用に対する知見を分析・検証したものを、運用へ応用することが可能かどうかを検証するという役割もユージン・ファーマ教授たちは担っています。新たな知見はこの検証を経て初めて運用に活用されます。
2020年3月末現在のディメンショナルグループの運用資産残高は4,540億米ドル(約49兆円)を誇ります。日本国内の投資信託の運用会社83社の公募型投資信託の運用残高の合計が約106兆円(2020年3月末現在)ですから、その約半分の規模に相当する資産をディメンショナルグループだけで運用していることになります。
ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズの投資哲学
ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズの投資哲学は、市場に対する信頼にあります。同社では、株式や債券などの金融商品の価格は、市場参加者全員の知識の集約により決定されており、あらゆる情報が価格に織り込まれていると考えています。株価であれば、その企業の資産、負債、将来のキャッシュフローの現在価値などの財務状況等の情報が全て株価に反映されていると考えます。そのため、一般の運用会社のように株価を予想したり、金利を予想したり、マーケットのタイミングを計ったりすることはしません。価格を生かし、市場そのものから期待リターンに関する情報を導き出します。
ディメンショナル・ファンド・アドバイザーの運用
前述の通り、ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズでは、株価を予想したり、あるいはマーケットタイミングを予測したりはしません。同社では、これまでの研究から、期待リターンを生み出す証券には共通の特性があると考えており、この特性を社名の由来でもある「ディメンション」と呼んでいます。一般的な金融の世界では「ファクター」と呼ばれるものです。同社で「ディメンション」であると認定されるには、説得力があり、持続性があり、普遍性があるというだけでなくコスト効率が良いという特性も満たされる必要があります。この長期的に高いリターンが期待できる特性を重視し、適切に分散されたポートフォリオを組んで長期間運用することで、ベンチマークを上回る投資成果を目指すのがディメンショナルの運用の特徴です。リバランスは常に行われます。
長期的に高いリターンが期待できる特性
ディメンショナルが長期的に高いリターンが期待できる特性(ディメンション)として挙げているものには株式の場合であれば次があります。
株式
- 企業規模(時価総額)
- 相対価格(株価/簿価)
- 収益力(営業利益/簿価)
企業規模とは、中小型株が大型株に対して優位であることを意味し、相対価格はバリュー株のグロース株に対する優位性を、そして収益力とは高収益力株の低収益力株に対する優位性を意味し、これらがリターンの源泉になるという考えです。
なお、一般的なファクター投資では、過去数年において数えきれないほどのファクターが見出されてきましたが、ディメンショナ・ファンド・アドバイザーズでは、ディメンション(ファクター)の数を増やすことをよしとはしていません。多くの新たに発見されたファクターは実際の運用に応用した時のコスト効率が悪いという理由のためです。
ディメンショナル・ファンド・アドバイザーのファンド
ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズのファンドは、日本からは証券会社を通じて直接購入することはできませんが(2020年4月末現在)、IFA法人のGAIA株式会社が提供するラップサービス「GMA(Gaia Monitored Account)」やあおぞら投信のファンド・オブ・ファンズ「ぜんぞうシリーズ」などで同社のファンドが採用されています。