金融庁、比較可能な共通KPIの傾向分析を公表ー5割弱の顧客の運用損益率がマイナス


金融庁は、2019年1月29日に、「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、取組方針・KPIを公表した金融事業者のリストを公表するとともに、共通KPIを公表した金融事業者について、比較可能な共通KPIの傾向分析「販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析」を公表しました。

共通KPIについては、「投資信託の販売会社の評価の『見える化』とは」をご覧ください。

金融庁によると、2019年12月末までに「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、取り組み方針を公表した金融事業者は1,561社で、そのうち467 社が自主的なKPIを公表し、103社が共通KPIを公表しました。

共通KPIは、①運用損益別顧客比率、②投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン、③投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターンの3つです。

 

運用損益別顧客比率の分析

金融庁は、①の運用損益別顧客比率について次のように分析しています。

 

  • 運用損益別顧客比率は、数値を公表した96社合算ベースで、5割弱の顧客の運用損益がマイナス。

 

  • 投資信託について、運用損益率0%以上(運用損益がプラス)の顧客割合を業態別(主要行、地域銀行、信用金庫・信用組合、証券会社(対面)、ネット系証券、投資信託会社、IFA)にみると、直販を行なっている独立系の投資信託会社が9割台と突出し、ネット系の証券会社やIFAが6割台で続く。
  • 個社ベースで、運用損益率0%以上の顧客割合上位(トップ3)(1位コモンズ投信(98%)、2位レオス・キャピタルワークス(91%)、3位セゾン投信(85%))を占める直販を行なっている独立系の投信会社にその要因を金融庁がヒアリングしたところ、各社とも、積立投資の効果を強調。
  • ファンドラップについては、運用損益率0%以上の顧客割合は、IFAが7割台であるほかは、業態別(主要行、地域銀行、証券会社(対面)、ネット系証券、IFA)に大きな違いは見られず、6割前後に集中。また、投資信託に比べ、運用損益のブレ幅は小さく、ほぼ、−10%〜+10%の範囲内に収まる。
  • 一部の投資信託の販売会社では、投資信託の口座開設年別に、運用損益率0%以上の顧客割合を公表。口座開設年が古いほど、運用損益率0%以上の顧客割合が高くなっている実態を示し、長期保有の有効性が「見える化」された。

 

投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターンとリスク・リターン

共通KPIの②の投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン、③の投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターンについては、金融庁は次のように分析しています。

 

  • 各販売会社の投資信託預り残高上位20銘柄のうち設定後5年以上の投資信託について、コスト・リターンを検証したところ、おおむね、コストの上昇に伴いリターンが低下。
  • リスク・リターンは、リスクの上昇に伴いリターンも上昇。また、シャープレシオ(リターン/リスク)が高くなるにつれ、運用損益率0%以上の顧客割合が高くなる傾向。
  • 業態別に見ると、相対的に、銀行や対面の証券会社は、高コストでシャープレシオのブレ幅が大きい。他方、直販を行っている投信会社やネット系の証券会社は、低コストでシャープレシオは高位に集中。

 

運用益が出ている顧客の割合が高い上位10社

なお、運用損益別顧客比率において、運用益が出ている顧客の割合が高い上位10社は次の通りです。(全96社の比率は金融庁のHP「販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析」で閲覧できます。)

 

会社名

運用損益がプラスの顧客割合

コモンズ投信 98%
レオス・キャピタルワークス 91%
セゾン投信 85%
丸三証券 79%
ソニー銀行 78%
野村證券 77%
SMBC信託銀行 69%
秋田銀行 69%
静岡銀行 68%
新生銀行 68%

(出所:金融庁「販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析)