金融庁が投資信託の運用会社の運用力を示す指標を公表−運用力が最も高かったのはレオス・キャピタルワークス


国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)に関する調査

金融庁は、2020年8月25日に「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)に関する調査」の結果を公表しました。

この調査における国内運用会社とは、投資信託の運用会社のことです。2020年8月末現在、今回の調査対象となった公募の追加型株式投資信託を運用する運用会社は84社あります。また、運用パフォーマンスを示す代表的な指標とは、これらの運用会社の投資信託の運用実績に基づいた共通の指標のことで、それにより、投資家はどの運用会社の運用力が高いか低いかを知ったり比較したりすることができます。なお、KPIは(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)の略称で、金融庁によるKPI公表の目的は、投資信託の運用会社の運用力を分かりやすく「見える化」することにあります。

 

運用パフォーマンスの評価

投資信託の運用パフォーマンス(実績)の評価方法には、シャープレシオ、アルファ、インベスター・リターン、情報比、累積リターンなどの定量評価やファンドマネージャーや運用会社を取材・調査して得た情報を評価する定性評価などさまざまなものが存在しています。

今回実施された金融庁の調査では、「シャープレシオ」と「累積リターン」という2つの指標が使われ、各運用会社が運用している5年間の運用実績のある投資信託について、シャープレシオと累積リターンを算出して、運用会社ごとに平均集計(純資産残高加重平均)して順位を付けています。

 

シャープレシオ

シャープレシオは、リスク調整後リターンの測定方法のひとつで、得られたリターンの大きさに単純に注目するのではなく、そのリターンを得るためにどれだけのリスクを取ったかにも注目し、投資信託がどれだけ安定的に高いリターンをあげることができているかを測るための指標です。基本的には、この値が大きいほど、安定的に高いリターンを残した優秀なファンドであると評価されます。

 

累積リターン

累積リターンは、投資家に支払われた分配金を投資に回して元本といっしょに運用したと仮定して算出した月間の収益率(リターン)を、対象期間にわたり掛け合わせたものです。分配金にかかる税金は考慮していません。投資信託には、分配金を年1回支払うもの、2回、4回、6回、あるいは毎月支払うもの、そして全く分配しないものがありますが、この条件で、累積リターンを計算することで、全てのファンドの収益率を同じベースで比較することが可能となります。

 

今回の調査では、各運用会社が運用する5年以上の運用実績があるファンドについて、シャープレシオと累積リターンを計測し、その上で、商品分類ごと、運用会社ごとに平均を集計(純資産残高加重平均)しています。算出方法などの詳細は金融庁のHPで確認できます。

 

データ概況

今回の調査を金融庁から委託されて実施したQUICK資産運用研究所では、データ概況として次のように述べています。

  • 2019年度は新型コロナウイルスの感染拡大により、2月から3月にかけそれまで堅調に推移していた世界の金融市場が急変。全ファンドの5年平均リターンがマイナスになった結果、シャープレシオ平均(運用効率)も前年度(2018年度)末のプラスからマイナスに転じた。
  • 分類別をみると「国内株式型」「国内債券型」「国内REIT型」と「バランス型」のシャーフプレシオ平均がプラスを維持したものの、その水準は前年度から軒並み縮小。その他の分類のシャープ平均はマイナスとなっている。
  • こうした中で、アクティブ運用を主体にする独立系運用会社の一部や、DC専用とつみたてNISA対象ファンドでは、シャープレシオ平均がプラスとなっている分類もあり、健闘が目立つ。
  • 分類ごとにDC専用とつみたてNISAに着目すると、「国内株式型」と「先 進国株式型」のつみたてNISAや「新興国株式型」のDC専用などでアクティブ運用が上位に立っているが、他は総じてインデックス運用が優位の状況。
  • 今回集計に加えた5年間の計算期間の期末と期初残高を見比べてみると、2019年度末の全ファンドの残高は5年前に比べて、20兆円あまり減少。インデックス型は全体で2兆円弱増加した一方で、アクティブ運用型で残高が大幅な減少。集計対象は5年以上運用しているファンドであるため、期間途中の解約による資金流出の規模が大きいことがわかる。

 

運用力が最も高かったのはレオス・キャピタルワークス

「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標に関する調査」におおいて、全ファンドベースで、シャープレシオ1位となったのはレオス・キャピタルワークスで、シャープレシオは0.50でした。レオス・キャピタルワークスは、累積リターンでも39.7%と1位を獲得しました。同社は2018年度末時点でもシャープレシオと累積リターンの両方で1位を獲得しており、2年連続で最も運用力の高い運用会社であるという結果となりました。

レオス・キャピタルワークスが運用するファンドのうち今回(並びに前回)の調査対象となったのは「ひふみ投信」(2008年10月1日)と「ひふみプラス」(2012年5月28日設定)の2本ですが、両ファンドは同じマザーファンドに投資するため、投資方針・組入銘柄等が同一のファンドで、日本の成長企業に投資します。前者は販売チャネルが直販、後者は証券会社や銀行などの販売会社経由という違いがあります。両ファンドとも、運用責任者はレオス・キャピタルワークスの代表取締役会長兼社長の藤野英人氏です。

 

商品分類別の結果

今回の調査では、全ファンドベースのほかに、商品分類別の結果も公表されており、各分類について、19年度末時点の5年平均シャープレシオの高さで1位となった運用会社は下記の通りです。

商品分類 運用会社 シャープレシオ
国内株式 SBIアセットマネジメント 0.55
先進国株式 アライアンス・バーンスタイン 0.57
新興国株式 UBSアセット・マネジメント 0.61
グローバル株式 JPモルガン・アセット・マネジメント 0.14
国内債券 日立投資顧問 0.60
先進国債券(投資適格) 朝日ライフ アセットマネジメント 0.20
先進国債券(非投資適格) ブラックロック・ジャパン 0.01
先進国債券(格付混在) 三井住友トラスト・アセットマネジメント 0.13
新興国債券 ドイチェ・アセット・マネジメント 0.10
グローバル債券 日興アセットマネジメント 0.01
国内REIT 三井住友DSアセットマネジメント 0.22
海外REIT 三井住友トラスト・アセットマネジメント 0.10
転換社債 三井住友トラスト・アセットマネジメント 0.24
コモディティ ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ 0.29
バランス いちよしアセットマネジメント 0.36
その他 スパークス・アセット・マネジメント 0.42