投資信託の人気
インターネットのお金に関する記事やマネー雑誌などを見ると、「毎月分配型の投資信託が人気・・・」、「今、投資家に人気の投資信託は・・・」など、「人気」という言葉がよく使われています。「人気」という言葉は人目を引きますが、その定義は曖昧なまま使われていることが多くあります。
投資信託についての記事で「人気」という言葉が使われるときは、一般的に、「よく売れている(販売額が大きい)投資信託」、「純資産総額(残高)が大きい投資信託」、「純資産総額が伸びている投資信託」、「資金純増が続いている投資信託」のいずれかを指しています。
ここでは「資金の純増が継続している投資信託」に注目してみます。
資金純増とは
資金の純増とは投資信託の設定額から解約額を差し引いた額がプラスであるということです。つまり、投資家が購入した額が売却した額を上回っていることを意味します。運用による影響は考慮せず、投資信託へのお金の出入りだけを考慮した数字です。
資金純増が継続している投資信託の数
投資信託協会によると、2019年9月末現在、5,756本の公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)が運用されています。投資信託の評価機関であるイボットソンが発行している投資信託事情によると、このうち、2019年9月末までの12ヵ月(1年間)にわたり資金純増が毎月続いた投資信託は287本ありました。この5,556本には運用期間が1年未満のファンドが含まれているものの、資金純増が1年間継続した投資信託は、概ね全体の5%程度に過ぎないということになります。
24ヵ月(2年間)資金純増が継続したファンドとなると、本数は急減し、わずか126本でした。さらに36ヵ月(3年間)では56本に減少し、60ヵ月(5年間)ではわずか14本でした。5,756本のファンド全てが5年以上運用されていたわけではありませんが、5年間資金純増が続くファンドは極めて少ないことは明らかです。
資金純増が60ヵ月以上継続している投資信託
資金純増が60ヵ月継続している投資信託は次の14本です。資金純増が継続しているからといって、これらのファンドの運用残高が顕著に大きいというわけではありません。投資信託協会のデータによると、株式投資信託(ETFを除く)の残高平均は約112億円(2019年9月末現在)ですが、それを下回るファンドもあります。
資金純増が60ヵ月継続している投資信託
ファンド名 | 運用会社 | 純資産総額 (億円) |
分配頻度 | 特徴 |
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | ニッセイ | 1332.1 | 1 |
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セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | セゾン投信 | 1873.22 | 1 |
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三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスF | 三井住友DS | 276.09 | 1 |
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<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国債券インデックスファンド | ニッセイAM | 114.6 | 1 |
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ユニオンファンド | ユニオン投信 | 67.04 | 1 |
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スマート・ファイブ(毎月) | 日興AM | 3422.46 | 12 | |
ニッセイ豪州ハイ・インカム株式F(毎月)《ラッキー・カントリー》 | ニッセイAM | 1736.56 | 12 | |
三菱UFJ 国内債券インデックスF(DC) | 三菱UFJ国際 | 364.69 | 1 |
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三菱UFJ プライムバランス(8資産)(DC) | 三菱UFJ国際 | 186.92 | 1 |
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三菱UFJ DC新興国株式インデックスファンド | 三菱UFJ国際 | 201.76 | 1 |
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インデックスコレクション (国内債券) | 三井住友トラスト | 264.24 | 1 |
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野村DC外国債券インデックスF | 野村AM | 125.02 | 1 |
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三菱UFJ DC新興国債券インデックスF | 三菱UFJ国際 | 77.23 | 1 |
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DC外国債券インデックス・オープン | 三井住友トラスト
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53.5 | 1 |
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(データ:2019年9月末、投資信託事情・投信まとなび、月末純資産30億円以上、DC専用投信を除く。)
14本全てに共通する特徴はありませんが、14本中11本はインデックスファンドで、14本中12本の分配頻度は年1回でした。また、14本中9本がDC(確定拠出年金)対象のファンドで、このうち7本は確定拠出年金でしか利用できないDC専用ファンドでした。つみたてNISA対象ファンドは3本でした。
資金純増が継続する投資信託のメリット
資金純増が継続している投資信託では、運用が安定するというメリットがあります。資金純減が継続している投資信託では、ファンドマネージャーは投資家の解約に対処するために、最適なタイミングでなくても、組み入れている株式や債券などを売却して現金を用意しなければなりませんが、資金純増が続いていれば、そういう対応をする必要がないためです。
投資信託を選ぶ際には、繰上償還のリスクを回避するために、運用残高がある程度大きい投資信託を選択することは大切です。しかし、テーマ型の投資信託によく見られるように、時流に乗って販売額が急増し、残高が急増するものの、ブームが長く続かなかったり、運用成果の悪化を嫌って資金が急激に流出したりして、短期間のうちに資金が流出してしまうこともよくあります。実際、2015年から2016年にかけて設定が相次ぎ、短期間のうちに残高を急速に伸ばしたロボット・AI関連の投資信託は、2019年1月以降、資金流出が目立つようになっています。
一時的な残高の伸びに惑わされることなく、資金純増が着実に継続しているかという点にも着目して投資信託を選択することが大切です。