2023年9月に償還した投資信託―29本中19本が運用期間途中での繰上償還


9月は39本の追加型株式投資信託が償還、このうち19本が繰上償還

投資信託協会によると、2023年9月に29本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。

この29本のうち満期償還(定時償還)は10本で、残りの19本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で償還された繰上償還でした。投資信託を購入する際には、この繰上償還のリスクを十分検討することが大切です。

投資信託の償還状況

繰上償還の理由

繰上償還の理由を見ると、19本のうち2本は、全残存口数に対して受益者からの解約の申し込みがあったために償還され、ファンド・オブ・ファンズ形式で運用されている「NN欧州リート・ファンド」シリーズの4本については、投資先ファンドが残高減少により繰上償還が予定されているために償還されました。残りの13本は残高の減少により効率的な運用を行うことが困難な状況が続いていることが理由でした。引き続き残高の減少が繰上償還の最も多い理由であり、投資家にとっては大きな投資リスクの一つです。

繰上償還の影響

投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。

多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託(5498本)の1本当たりの平均残高は約181億円です(2023年9月現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は407本(2023年9月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。

1口当たり償還額

2023年9月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、29本中15本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。

1口当り償還額が最も低かったのは、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの「NN欧州リート・ファンド(毎月決算コース/為替ヘッジあり)」で1口当り償還額は4,716.09円でした。同ファンドは2015年1月に設定され、今年9月に繰上償還されました。

一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、日興アセットマネジメントの「日興スリートップ(資産成長型)」で、1口当り償還額は30,623.07円でした。同ファンドは2008年11月に設定され、今年9月に満期償還を迎えました。

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが13本もありました。

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのはSBIアセットマネジメントの「SBI・GS NexGen(高成長DX)」で、合計額は5,037.3円(1口当り償還額5,037.3円+分配金0円)でした。

一方、この合計額が最も高かったのは、「日興スリートップ(資産成長型)」で、合計額は31,093.07円(1口当り償還額30,623.07円+分配金470円)でした。

2023年9月に償還した追加型株式投資信託の一覧

運用会社 ファンド名 設定日 償還時純資産
総額
(百万円)
1口当り
償還額
(A)
(円)
期中
分配金
(B)
(円)
合計
(A) + (B)
(円)
満期/繰上
野村 野村豪州債券ファンドAコース 2003.9.3 40 8,501.42 1,220.00 9,721.42 満期
野村 野村豪州債券ファンドCコース 2003.9.3 26 9,328.99 1,442.00 10,770.99 満期
野村 オーストラリア債券ファンド 2003.11.17 1,287 6,389.94 10,567.00 16,956.94 満期
野村 野村豪州債券ファンド Aコース(野村SMA向け) 2013.12.4 1 14,931.12 90.00 15,021.12 繰上
野村 野村豪州債券ファンド Bコース(野村SMA向け) 2013.12.4 1 13,292.64 50.00 13,342.64 繰上
日興 日興スリートップ(資産成長型) 2008.11.12 77 30,623.07 470.00 31,093.07 満期
大和 ダイワ米国国債ファンド -ラダ-10- (為替ヘッジあり) 2013.9.27 3,288 7,509.51 1,530.00 9,039.51 満期
大和 ダイワ米国国債ファンド -ラダ-10- (為替ヘッジなし) 2013.9.27 205 12,637.42 2,020.00 14,657.42 満期
大和 通貨選択型ダイワ・トップ・オブ・ジャパン(米ドル投資型) 2013.9.18 553 16,780.01 7,300.00 24,080.01 満期
明治安田 新成長株ファンド(隔月決算型・予想分配金提示型) 2020.12.16 1 9,265.14 600.00 9,865.14 繰上
ゴールドマン NN欧州リート・ファンド(毎月決算コース/為替ヘッジなし) 2014.6.30 809 5,277.47 3,960.00 9,237.47 繰上
ゴールドマン NN欧州リート・ファンド(資産形成コース/為替ヘッジなし) 2014.6.30 438 8,533.99 0.00 8,533.99 繰上
ゴールドマン NN欧州リート・ファンド(毎月決算コース/為替ヘッジあり) 2015.1.30 118 4,716.09 2,776.00 7,492.09 繰上
ゴールドマン NN欧州リート・ファンド(資産形成コース/為替ヘッジあり) 2015.1.30 92 6,822.83 0.00 6,822.83 繰上
パインブリッジ りそなジャパンCSRファンド 2005.3.18 854 13,268.63 5,470.00 18,738.63 繰上
パインブリッジ パインブリッジ日本株式SRIファンド<DC> 2007.12.20 54 17,918.29 0.00 17,918.29 繰上
ブラックロック ブラックロック・ヘルスサイエンス・ファンド(為替ヘッジなし/年4回決算型) 2016.1.14 547 10,579.23 8,700.00 19,279.23 満期
ブラックロック ブラックロック・ヘルスサイエンス・ファンド(為替ヘッジあり/年4回決算型) 2016.1.14 159 11,356.98 7,300.00 18,656.98 満期
HSBC HSBCブラジル債券オープン1年決算型 2008.9.30 97 14,396.93 3,400.00 17,796.93 満期
三井住友トラスト 米国REIT・リサーチ・オープン 為替ヘッジあり(毎月決算型) 2016.8.16 85 9,423.82 405.00 9,828.82 繰上
三井住友トラスト 米国REIT・リサーチ・オープン 為替ヘッジなし(毎月決算型) 2016.8.16 330 14,192.59 1,215.00 15,407.59 繰上
三井住友トラスト 米国REIT・リサーチ・オープン 為替ヘッジあり(年2回決算型) 2016.8.16 102 9,691.86 0.00 9,691.86 繰上
三井住友トラスト 米国REIT・リサーチ・オープン 為替ヘッジなし(年2回決算型) 2016.8.16 521 15,937.86 0.00 15,937.86 繰上
SBI SBI・GS NexGen(代替エネルギー) 2021.8.31 130 9,942.71 0.00 9,942.71 繰上
SBI SBI・GS NexGen(グローバルEV) 2021.8.31 125 7,352.47 0.00 7,352.47 繰上
SBI SBI・GS NexGen(高成長DX) 2021.8.31 229 5,037.30 0.00 5,037.30 繰上
SBI SBI・GS NexGen(先端医療) 2021.8.31 73 7,223.07 0.00 7,223.07 繰上
SBI SBI・GS NexGen(次世代通信) 2021.8.31 57 12,499.79 0.00 12,499.79 繰上
SBI SBIジェンダー・フリーインデックス・ファンド 2021.11.10 32 11,089.25 0.00 11,089.25 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)