2017年11月に償還した投資信託



⇨今月も23本が繰上償還

⇨繰上償還の理由は運用残高の減少


 

投資信託協会によると、2017年11月に29本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。

このうち設定時に定められた運用期間を満了して償還を迎えたのは4本で、2本は基準価額が一定額を超過した場合に償還するという条件を満たしての償還、残りの23本はあらかじめ定められていた運用期間を繰り上げて償還する、繰上償還が実施されました。

毎月多くの新しい投資信託が設定されていますが、同時に、多くの投資信託の運用が繰上償還により中止されています。繰上償還が実施されると、投資家は想定していた資産計画を中断しなければなりません。償還により運用資産を現金化しなければならないため、償還時点でファンドに損失が出ていれば、損失が実現されます。利益が出ていれば、通常は、利益を確定して税金を支払わなければなりません。

繰上償還は投資家の意思とは別のところで決定されてしまうので、繰上償還リスクを回避するためには、購入前に次の点を確認することが大切です。

  • 購入しようとしている投資信託の純資産総額がある程度の規模があるか。
  • 資金流出が続いていないか。

なお、株式投信の1ファンドあたり平均運用資産残高(純資産総額)は約152億円です(2017年9月末現在)ので、これより大きいファンドを選択するのが繰上償還を回避する防衛策と言えます。運用残高が50億円未満のファンドで、資産が減少を続けているものについては注意が必要です。

また、ファンドの純資産総額が成長するかどうかは不透明であるため、新規に設定されたファンドは購入しない、信託期間が無期限のファンドを検討するということも防衛策の一つとなります。

 

繰上償還の理由

2017年11月に繰上償還された23本のファンドの理由を見ると、1本は全受益権口数を有する受益者から解約の意向によるもの、2本はファンドの連動対象である指数の算出が2017年12月29日をもって停止されることになったため、残りの20本については、運用資産の減少により約款で定めた投資方針にそった運用ができなくなったというものでした。

 

運用会社別の繰上償還ファンド数

繰上償還された23本の投資信託を運用会社別に見ると、三井住友トラスト・アセットマネジメントが9本と最も多く、次いで損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社が5本、アセットマネジメントOneが4本と続きました。

運用会社別繰上償還数

 

1口当たり償還額

2017年11月に償還したファンドの1口当り償還額(A)については、設定時の基準価額である10,000円を上回ったのは32本中17本でした。

1口当り償還額が最も高かったのは三井住友トラスト・アセットマネジメントの「日本株式ダブル・ブル・ファンド(SMA専用)」で、1口当り償還額は15482.75円でした。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは大和証券投資信託委託の「ダイワ高金利通貨ファンド(毎月決算型)」で、1口当り償還額は4573.63円でした。

また、1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を上回ったのは29本中26本でした。

1口当り償還額と分配金の合計額が最も高かったのはアセットマネジメントOneの「DIAM人民元債券ファンド」で、合計額は17004.08円(1口当り償還額15194.08円+分配金1810円)でした。

一方で、1口当り償還額と分配金の合計額が最も低かったのは三井住友トラスト・アセットマネジメントの「コモディティ・オープン」で合計額は7104.4円(1口当り償還額7104.4円+分配金0円)でした。

 

運用期間

投資信託は長期運用のための商品であると考えられていますが、11月に償還を迎えた投資信託の運用期間はどのくらいだったでしょうか。

2017年11月に償還したファンドの中で、最も運用期間が長かったのは、1998年10月30日に設定された損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社の「損保ジャパン-TCW・MBSオープンAコース(為替ヘッジあり)」と「損保ジャパン-TCW・MBSオープンBコース(為替ヘッジなし)」でした。19年以上も運用が続いたファンドも、資産総額の減少により繰上償還されました。

一方、限定追加型を除いて運用期間が最も短かったのは、T&Dアセットマネジメントが運用し、繰上償還された「T&D マーチンゲール 日本株式戦略ファンド」で設定は2015年2月19日でした。

 

【2017年11月に償還した追加型株式投資信託

運用会社 ファンド名 償還日 純資産総額(単位:百万円) 1口当り償還額(単位:円)A 期中分配金(単位:円)B 合計(A+B) 満期・繰上
野村 野村アフリカ株投資 マネープール・ファンド 17 4 10,005.42 60.00 10,065.42 満期
大和 ダイワ高金利通貨ファンド(毎月決算型) 20 721 4,573.63 3,305.00 7,878.63 満期
T&D T&D マーチンゲール 日本株式戦略ファンド 24 13 12,137.46 179.00 12,316.46 繰上
フィデリティ フィデリティ・世界高格付け債券ファンド(毎月決算型) 30 260 6,008.63 6,380.00 12,388.63 繰上
三菱UFJ国際 国際機関債券ファンド(毎月決算・ニュージーランドドル型) 8 262 8,596.83 4,595.00 13,191.83 繰上
三菱UFJ国際 新興国高金利通貨オープン(毎月決算型) 14 6 6,462.86 4,025.00 10,487.86 繰上
三菱UFJ国際 国際オーストラリア債券オープン(毎月決算型) 20 946 5,822.90 4,690.00 10,512.90 満期
三菱UFJ国際 三菱UFJ 世界金融ハイインカム証券ファンド2014‐05(円ヘッジ)(限定追加型) 24 14,209 10,327.87 0.00 10,327.87 満期
損保ジャパン 損保ジャパン-TCW・MBSオープンAコース(為替ヘッジあり) 2 68 10,146.65 1,683.00 11,829.65 繰上
損保ジャパン 損保ジャパン-TCW・MBSオープンBコース(為替ヘッジなし) 2 232 10,952.99 4,680.00 15,632.99 繰上
損保ジャパン 損保ジャパン-TCW・MBSファンド(毎月分配型 2 245 8,007.52 3,692.00 11,699.52 繰上
損保ジャパン スター・マンスリープラス 2 147 8,549.73 4,490.00 13,039.73 繰上
損保ジャパン 損保ジャパン‐TCW・MBSオープン(DC年金)Bコース(為替ヘッジなし) 2 0 12,314.89 0.00 12,314.89 繰上
アセットマネジメントOne DIAM人民元債券ファンド 7 271 15,194.08 1,810.00 17,004.08 繰上
アセットマネジメントOne 地球温暖化防止関連株ファンド 10 2,086 14,064.91 1,100.00 15,164.91 繰上
アセットマネジメントOne 地球温暖化防止関連株ファンド(3ヵ月決算型) 10 583 10,809.72 1,050.00 11,859.72 繰上
アセットマネジメントOne 新光日本株成長戦略ファンド 円コース 13 1,575 14,986.01 400.00 15,386.01 条件
アセットマネジメントOne みずほエマージングボンドオープン 15 585 8,434.52 1,350.00 9,784.52 繰上
三井住友トラスト 新興国社債ファンド(為替ヘッジなし)(毎月決算型) 9 6 9,417.62 4,590.00 14,007.62 繰上
三井住友トラスト 新興国社債ファンド(為替ヘッジあり)(毎月決算型) 9 2 8,807.82 1,375.00 10,182.82 繰上
三井住友トラスト ヨーロッパ高配当株オープン(毎月決算型) 9 19 10,863.00 2,380.00 13,243.00 繰上
三井住友トラスト 新興国株式インデックス・オープン 9 36 13,051.86 0.00 13,051.86 繰上
三井住友トラスト 新興国債券インデックス・オープン 9 21 10,295.29 0.00 10,295.29 繰上
三井住友トラスト コモディティ・オープン 9 33 7,104.40 0.00 7,104.40 繰上
三井住友トラスト グローバルREITインデックス・オープン .9 47 15,103.66 0.00 15,103.66 繰上
三井住友トラスト J-REITインデックス・オープン 9 383 12,823.63 0.00 12,823.63 繰上
三井住友トラスト 日本株式ダブル・ブル・ファンド(SMA専用) 21 116 15,482.75 0.00 15,482.75 繰上
三井住友トラスト 日本厳選割安株ファンド2015-10(繰上償還条件付) 21 11,187 11,969.98 0.00 11,969.98 条件
三井住友アセット アジア優良株ファンド 29 495 9,864.05 3,430.00 13,294.05 繰上

(データ出所:投資信託協会、EDINET