2020年12月に償還した投資信託ー20本中11本が運用期間途中での繰上償還


12月は20本の追加型株式投資信託が償還、このうち11本が繰上償還

投資信託協会によると、2020年12月に20本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。このうち11本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間を満了せずに信託期間を繰上げて償還されたものです。7本は満期償還、2本は、ファンドの基準価額が一定額に達した場合に、安定運用に切り替えてファンドを償還させるという繰上償還条項が付いていたファンドで、その条件を満たした為に償還されたものです。

2020年12月に償還した投資信託

繰上償還の理由

2020年12月に繰上償還されたファンドの償還理由は、残高の減少により運用方針に則った運用の継続が困難、あるいは収益の獲得が困難となることが予想される等というものが7本、マザーファンドにおいて一銘柄あたりの投資割合が信託約款に定められた投資制限の上限に近づいており、今後、マザーファンドで保有する組入証券が償還を迎えた際に、金利低下が続く環境下では、既に保有している銘柄以外の適切な代替銘柄が見つからず、信託約款に定められた運用方針に則った運用を継続することが困難という理由が2本、ファンド・オブ・ファンズにおいて、委託先より運用戦略の運用終了(ファンドの終了)の通知があったためという理由が1本、最終受益者より全残存口数の解約の意向があったためという理由が1本でした。

引き続き、運用残高の減少により運用方針に則った運用ができなくなったことが繰上償還の理由として最も多い状況です。

 

繰上償還の影響

投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。

繰上償還時に、保有している投資信託に評価損失が生じていた場合、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定せざるを得なくなります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して税金を支払うことになります。

さらに、繰上償還が投資家にとって大きな問題となるのは、資産計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で償還(運用終了)されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした計画をやり直す必要が生じてしまいます。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいことと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約124億円です(2020年11月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は280本(2020年11月末現在)存在しています。少なくとも平均残高以上で、残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。

また、テーマ型ファンドでは、流行に乗って設定時には大きな金額が集まり運用が開始されても、そのテーマが時代に合わなくなり運用残高が急速に減少してしまうことがあります。投資信託は長期運用が前提ですので、テーマ型ファンドを選ぶ際には、そのテーマが長期的に通用するものかどうかを慎重に検討することが大切です。

 

1口当たり償還額

2020年12月に償還した投資信託20本の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは18本でした。

1口当り償還額が最も高かったのは、JPモルガン・アセット・マネジメントの「JPMチャイナ・アクティブ・オープン」で、1口当り償還額は84,239.81円でした。同ファンドは、2004年1月に設定され、2020年12月に満期償還を迎えました。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、東京海上アセットマネジメント株式会社の「大和マイクロファイナンス・ファンド」で、1口当り償還額は7,670.71円でした。同ファンドは、2011年3月に設定されましたが、純資産総額が少額のなか運用を継続してきたものの、金利の低下によりリスク対比の収益の獲得が困難となるという理由から繰上償還されました。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドはありませんでした。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも、「JPMチャイナ・アクティブ・オープン」で、合計額は84,39.81円(1口当り償還額84,239.81円+分配金0円)でした。

一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社の「シュローダー中東/北アフリカ・ファンド」で、合計額は10,095.69円(1口当たり償還額10,095.69円+分配金0円)でした。同ファンドは、ファンドの受益権口数の減少が続き、信託約款に規定した運用の継続が困難な状況ということを理由に繰上償還されました。

 

運用期間

2020年12月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2000年6月に設定された「りそな・バリュー&グロース」でした。同ファンドは運用残高の減少を理由に繰上償還されました。約20年間の運用による償還額と運用期間中に支払われた分配金の合計金額は17,737.15円(1口当たり償還額14,937.15円+期中分配金2,800円)でした。

 

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金の対象になっている投資信託は全て信託期間が無期限となっています。

 

【2020年12月に償還した追加型株式投資信託】

運用会社 ファンド名 償還日 償還時
純資産総額(百万円)
償還時
1口当たり
償還額(A)
期中分配金(円)(B) 合計(A)+(B) 満期・繰上
野村 野村時間分散投資「日経225・国内債券」(限定追加型) 18日 60 15,877.81 0.00 15,877.81 満期
岡三 日本連続増配成長株ファンド19-03(繰上償還条項付) 8日 633 11,925.54 0.00 11,925.54 条件
JPモルガン JPMチャイナ・アクティブ・オープン 17日 2,931 84,239.81 0.00 84,239.81 満期
シュローダー シュローダー中東/北アフリカ・ファンド 4日 321 10,095.69 0.00 10,095.69 繰上
ニッセイ ニッセイ・コーポレート・ハイブリッド証券ファンド2017-03(為替ヘッジあり) 10日 2,095 10,182.82 350.00 10,532.82 繰上
ニッセイ ニッセイ・コーポレート・ハイブリッド証券ファンド2017-06(為替ヘッジあり) 10日 1,453 10,089.49 210.00 10,299.49 繰上
One DRC 日本株アクティブファンド 2日 1,322 10,454.75 716.00 11,170.75 満期
東京海上 大和マイクロファイナンス・ファンド 23日 1,100 7,670.71 2,470.00 10,140.71 繰上
PGIM PRUグッドライフ2020(年金) 15日 1,293 14,369.44 0.00 14,369.44 満期
アムンディ りそな・バリュー&グロース 4日 990 14,937.15 2,800.00 17,737.15 繰上
アムンディ アムンディ・りそな グローバル・ブランド・ファンド 7日 1,137 11,041.23 9,241.00 20,282.23 繰上
アムンディ アムンディ・次世代医療テクノロジー・ファンド(限定追加型・繰上償還条項付) 9日 6,041 12,013.76 0.00 12,013.76 条件
三井住友トラスト GIVI世界株式ファンド(SMA専用) 9日 89 10,553.28 0.00 10,553.28 繰上
三井住友トラスト JPX日経インデックス400・オープン 16日 996 15,342.43 0.00 15,342.43 繰上
三井住友DS JASDAQ-TOP20指数ファンド 22日 396 29,905.82 0.00 29,905.82 満期
三井住友DS 三井住友・アジア・オセアニア好配当株式オープン(年1回決算型) 23日 68 10,721.80 0.00 10,721.80 繰上
三井住友DS 日本消費関連株ファンド(予想分配金提示型) 24日 1,627 11,983.74 1,670.00 13,653.74 満期
三井住友DS 日本消費関連株ファンド(資産成長型) 24日 728 14,023.23 0.00 14,023.23 満期
三井住友DS 米国メジャー企業債ファンド 28日 280 10,720.88 90.00 10,810.88 繰上
カレラ カレラ ワールド債券アクティブファンド 14日 198 9,678.46 520.00 10,198.46 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)