2021年1月に償還した投資信託ー24本中15本が運用期間途中での繰上償還


1月は24本の追加型株式投資信託が償還、このうち15本が繰上償還

投資信託協会によると、2021年1月に24本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。このうち15本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間を満了せずに信託期間を繰上げて償還されたものです。満期償還は8本、残りの1本は、ファンドの基準価額が一定額に達した場合に、安定運用に切り替えてファンドを償還させるという繰上償還条項が付与されていたファンドで、その条件を満たした為に償還されたものです。

2021年1月に償還した投資信託

繰上償還の理由

2021年1月に繰上償還されたファンドの繰上理由は、残高の減少により運用方針に則った運用の継続が困難というものが14本、自己設定のみの運用であり、今後、販売会社の拡大の見込みが立たないためという理由が1本でした。

引き続き、運用残高が小さいことで運用方針に則った運用ができなくなったことが繰上償還の主な理由となっています。

 

繰上償還の影響

投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。

繰上償還時に、保有している投資信託に評価損失が生じていた場合、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえなくなります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

さらに、繰上償還が投資家にとって大きな問題となるのは、資産計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした計画をやり直す必要が生じてしまいます。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約129億円です(2021年1月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は296本(2021年1月末現在)存在しています。少なくとも平均残高以上で、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。

また、最近注目されているSDGs関連ファンド、ESG関連ファンド、AI関連ファンドを含むテーマ型ファンドでは、流行に乗って設定時には大きな金額が集まり運用が開始されても、そのテーマが時代に合わなくなり運用残高が急速に減少してしまうことがあります。投資信託は長期運用が前提ですので、テーマ型ファンドを選ぶ際には、そのテーマが長期的に通用するものかどうかを慎重に検討することが大切です。

 

1口当たり償還額

2021年1月に償還した投資信託24本の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは11本だけでした。

1口当り償還額が最も高かったのは、ピクテ投信投資顧問の「ピクテ日本株厳選アルファ・プラス 米ドルコース」で、1口当り償還額は16,595.71円でした。同ファンドは、2013年9月に設定され、2021年1月に満期償還を迎えました。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、日興アセットマネジメント株式会社の「日興GAMエマージングストラテジー・ファンド(毎月分配型)」で、1口当り償還額は2,237.66円でした。同ファンドは、2011年2月に設定され、2021年1月に満期償還を迎えました。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが8本ありました。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも、「ピクテ日本株厳選アルファ・プラス 米ドルコース」で、合計額は16,595.71円(1口当り償還額16,595.71円+分配金0円)でした。

一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、大和アセットマネジメント株式会社の「ツインアクセル(ブラジル国債&世界小型株式)≪2021-01≫」で、合計額は9,343.6円(1口当たり償還額9,273.6円+分配金70円)でした。

 

運用期間

2021年1月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2007年6月に設定された「パインブリッジ・ニューグローバルファンド<毎月分配タイプ>」と「パインブリッジ・ニューグローバルファンド<1年決算タイプ>」でした。両ファンドとも運用残高の減少を理由に1月に繰上償還されました。

一方、運用期間が最も短かったのは、2020年1月にBNPパリバ・アセットマネジメント株式会社が設定した「BNPパリバ・ターゲットリターン・ファンド(年4回決算型)」と「BNPパリバ・ターゲットリターン・ファンド(資産成長型)」でした。両ファンドの償還時の純資産総額は各々約2億円でした。両ファンドは運用残高が小さいことを理由に繰上償還されました。

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金の対象になっている投資信託は全て信託期間が無期限となっています。

 

【2021年1月に償還した追加型株式投資信託】

運用会社 ファンド名 償還日 償還時純資産総額(百万円) 償還時1口当たり償還額(A) 期中分配金(円)(B) 合計(A)+(B) 満期・繰上
日興 日興GAMエマージングストラテジー・ファンド(毎月分配型 19日 929 2,237.66 9,090.00 11,327.66 満期
日興 日興GAMエマージングストラテジー・ファンド(資産成長型) 19日 53 12,937.78 800.00 13,737.78 満期
日興 スマート・ラップ・エマージング・ジオ(毎月分配型) 20日 87 8,698.61 1,860.00 10,558.61 繰上
日興 スマート・ラップ・エマージング・ジオ(1年決算型) 20日 116 10,945.71 0.00 10,945.71 繰上
日興 ノーロード日本国債フォーカス(毎月分配型) 25日 548 10,698.87 1,980.00 12,678.87 満期
大和 ツインアクセル(ブラジル国債&世界小型株式)≪2021-01≫ 27日 816 9,273.60 70.00 9,343.60 満期
大和 ツインアクセル(ブラジル国債&オーストラリア小型株式)≪2021-01≫ 27日 1,817 10,598.55 60.00 10,658.55 満期
パインブリッジ パインブリッジ・ニューグローバルファンド<毎月分配タイプ> 15日 227 8,317.05 2,300.00 10,617.05 繰上
パインブリッジ パインブリッジ・ニューグローバルファンド<1年決算タイプ> 15日 52 10,430.77 650.00 11,080.77 繰上
ピクテ ピクテ日本株厳選アルファ・プラス 米ドルコース 14日 1 16,595.71 0.00 16,595.71 満期
ピクテ ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズ・中国株 15日 169 13,165.87 0.00 13,165.87 満期
ピクテ ピクテ円インカム・セレクト・ファンド(1年決算型) 15日 27 11,687.51 0.00 11,687.51 満期
アムンディ みずほ・アムンディ グローバル・ハイブリッド証券ファンド 2018-06(限定追加型/繰上償還条項付) 28日 2,174 11,433.45 20.00 11,453.45 条件
BNPパリバ BNPパリバ・ターゲットリターン・ファンド(年4回決算型) 29日 201 9,484.75 0.00 9,484.75 繰上
BNPパリバ BNPパリバ・ターゲットリターン・ファンド(資産成長型) 29日 201 9,484.94 0.00 9,484.94 繰上
三井住友トラスト 欧州REIT・リサーチ・オープン(年2回決算型) 18日 0 9,395.84 0.00 9,395.84 繰上
三井住友DS アッシュモア新興国短期社債ファンド毎月分配型(為替ヘッジなし) 29日 18 8,674.66 2,625.00 11,299.66 繰上
三井住友DS アッシュモア新興国短期社債ファンド毎月分配型(為替ヘッジあり) 29日 31 7,388.43 2,625.00 10,013.43 繰上
三井住友DS アッシュモア新興国短期社債ファンド資産成長型(為替ヘッジなし) 29日 32 11,159.92 0.00 11,159.92 繰上
三井住友DS アッシュモア新興国短期社債ファンド資産成長型(為替ヘッジあり) 29日 80 9,936.97 0.00 9,936.97 繰上
三井住友DS BDCプラス(為替ヘッジあり/年4回決算型) 29日 150 7,787.16 1,985.00 9,772.16 繰上
三井住友DS BDCプラス(為替ヘッジなし/年4回決算型) 29日 138 7,523.69 1,940.00 9,463.69 繰上
三井住友DS BDCプラス(為替ヘッジあり/年1回決算型) 29日 132 10,007.16 0.00 10,007.16 繰上
三井住友DS BDCプラス(為替ヘッジなし/年2回決算型) 29日 123 9,514.14 0.00 9,514.14 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)