2022年1月に償還した投資信託ー14本中9本は繰上償還


1月は14本の追加型株式投資信託が償還、このうち9本が繰上償還

投資信託協会によると、2022年1月に14本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することを言います。

この14本のうち満期償還は5本だけで、9本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。また、満期償還のうち1本は、設定当初は信託期間が無期限とされていたものの、途中で信託期間を2022年1月に変更したファンドでした。

2022年1月に償還した投資信託

繰上償還の理由

2022年1月に繰上償還されたファンド9本の繰上償還の理由を見ると、全てのファンドが、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったことが理由でした。投資信託は残高が少なくなると、効率的な分散投資を行うことが困難になります。

 

繰上償還の影響

投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失が生じていたならば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるを得なくなります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

これにより、投資家は資産運用計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約145億円です(2022年1月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は336本(2022年1月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。

 

1口当たり償還額

2022年1月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは14本中11本でした。

1口当り償還額が最も高かったのは、アセットマネジメントOneの「日本実力株ファンド(DC年金)」で、1口当り償還額は27,635.61円でした。同ファンドは、2002年に設定された確定拠出年金用のファンドでしたが、マザーファンドの運用残高の減少により、信託約款の運用の基本方針に定める分散投資を行うことが困難となる可能性があるとして、2022年1月に繰上償還されました。

 

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、アセットマネジメントOneの「DIAM高金利ソブリン債券ファンド(毎月決算型)」で、1口当り償還額は6,591.12円でした。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドはありませんでした。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも、「日本実力株ファンド(DC年金)」で、合計額は27,805.61円(1口当り償還額27,635.61円+分配金170円)でした。

一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、「DIAM高金利ソブリン債券ファンド(毎月決算型)」で、合計額は10,236.12円(1口当たり償還額6,591.12円+分配金3,645円)でした。

 

運用期間

2022年1月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2002年1月に設定された「大和住銀ジャパン・スペシャル マーケット・コース(ヘッジなし)」と「大和住銀ジャパン・スペシャル ニュートラル・コース(ヘッジあり)」でした。両ファンドとも、1月に満期償還を迎えました。

 

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金用の投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドは無期限または20年以上とされています。

 

2022年1月に償還した追加型株式投資信託

運用会社 ファンド名 償還時純資産総額(百万円) 償還時1口当たり償還額(A) 期中分配金(円)(B) 合計(A)+(B)(円) 満期・繰上
大和 ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.4 -日本の真価- (高配当株コース) 1,895 12,379.61 9,880.00 22,259.61 満期
大和 ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.4 -日本の真価- (国債コース) 78 9,226.94 1,640.00 10,866.94 満期
ゴールドマン GSビッグデータ・ストラテジー(欧州株)Aコース(為替ヘッジあり) 44 12,669.23 0.00 12,669.23 繰上
ゴールドマン GSビッグデータ・ストラテジー(欧州株)Bコース(為替ヘッジなし) 132 12,422.14 0.00 12,422.14 繰上
ピクテ ピクテ・ユーロ最高格付国債ファンド(毎月決算型) 114 7,174.83 7,874.00 15,048.83 満期
アセットマネジメントOne DIAM高金利ソブリン債券ファンド(毎月決算型) 376 6,591.12 3,645.00 10,236.12 繰上
アセットマネジメントOne 日本実力株ファンド(DC年金) 3 27,635.61 170.00 27,805.61 繰上
アセットマネジメントOne 瀬戸内4県ファンド 595 14,953.55 1,700.00 16,653.55 繰上
三井住友DS 世界SDGsハイインカム・ファンド(為替ヘッジあり 毎月分配型 523 10,459.71 390.00 10,849.71 繰上
三井住友DS 世界SDGsハイインカム・ファンド(為替ヘッジなし 毎月分配型) 82 10,431.31 1,070.00 11,501.31 繰上
三井住友DS 世界SDGsハイインカム・ファンド(為替ヘッジあり 資産成長型) 557 10,834.24 0.00 10,834.24 繰上
三井住友DS 世界SDGsハイインカム・ファンド(為替ヘッジなし 資産成長型) 74 11,591.14 0.00 11,591.14 繰上
三井住友DS 大和住銀ジャパン・スペシャル ニュートラル・コース(ヘッジあり) 562 10,125.58 2,695.00 12,820.58 満期
三井住友DS 大和住銀ジャパン・スペシャル マーケット・コース(ヘッジなし) 100 13,918.25 12,950.00 26,868.25 満期

 

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)