2022年2月に償還した投資信託―27本中22本が運用期間途中での繰上償還


2月は27本の追加型株式投資信託が償還、このうち22本が繰上償還

投資信託協会によると、2022年2月に27本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することを言います。

この27本のうち満期償還は5本だけで、残りの22本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。8割ものファンドが繰上償還だったわけです。

繰上償還の割合

繰上償還の理由

2022年2月に繰上償還されたファンド22本の繰上償還の理由を見ると、ほとんどのファンドが、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったことが理由でした。投資信託は残高が少なくなると、効率的な分散投資を行うことが困難になります。

 

繰上償還の影響

投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

これにより、投資家は資産運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。

多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。

 

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約145億円です(2022年1月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は336本(2022年1月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。

 

1口当たり償還額

2022年2月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは27本中17本でした。

1口当り償還額が最も高かったのは、PGIM ジャパン株式会社の「PRUグッドライフ2050(年金)」で、1口当り償還額は25,360.19円でした。同ファンドは、2010年に設定されたライフサイクル型ファンドで、2050年まで運用される想定でしたが、残高減少が続いており、今後も純資産総額の大幅な増加は見込めない状況であるとして、2022年2月に繰上償還されました。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、パインブリッジ・インベストメンツ株式会社の「パインブリッジ新成長国ダブルプラス<毎月分配タイプ>」で、1口当り償還額は6,644.47円でした。同ファンドも、運用残高の減少を理由に繰上償還されました。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが6本ありました。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも、「PRUグッドライフ2050(年金)」で、合計額は25,360.19円(1口当り償還額25,360.19円+分配金0円)でした。

一方、1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、株式会社GCIアセット・マネジメントの「GCIオルタナティブバスケット・ファンドV10(ラップ専用)」で、合計額は9,020.6円(1口当たり償還額9,020.6円+分配金0円)でした。同ファンドは、全受益権口数を保有する受益者に解約の意向があったという理由で繰上償還されました。

 

運用期間

2022年2月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、1987年11月に設定された「ミリオン(従業員積立投資プラン)インデックスポートフォリオ」と「ミリオン(従業員積立投資プラン)フィナンシャルミックスポートフォリオ」でした。両ファンドとも、純資産総額が長期間にわたり低水準で推移しており、受益者に十分なサービスを提供できなくなることが懸念されるという理由で繰上償還されました。

 

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金用の投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドは無期限または20年以上とされています。

 

【2022年2月に償還した追加型株式投資信託】

運用会社 ファンド名 純資産
総額
1口当り
償還額
(A)
期中
分配金
(B)
合計
(A) + (B)
満期/繰上
日興 収益追求(資産・運用手法分散)投資ファンド 10 10,085.73 0.00 10,085.73 繰上
大和 ダイワ・アセアン内需関連株ファンド 982 10,085.16 7,000.00 17,085.16 満期
大和 ダイワ・アセアン内需関連株ファンド・マネー・ポートフォリオ 3 9,970.33 0.00 9,970.33 満期
明治安田 ミリオン(従業員積立投資プラン)インデックスポートフォリオ 384 10,138.97 65.00 10,203.97 繰上
明治安田 ミリオン(従業員積立投資プラン)フィナンシャルミックスポートフォリオ 187 9,085.54 65.00 9,150.54 繰上
明治安田 スイス好配当株式ファンド(為替ヘッジあり) 1,156 14,076.75 200.00 14,276.75 繰上
明治安田 スイス好配当株式ファンド(為替ヘッジなし) 1,157 14,917.24 180.00 15,097.24 繰上
ニッセイ ニッセイアジア好配当株式ファンド(毎月分配型 428 9,688.30 7,045.00 16,733.30 満期
ニッセイ ニッセイアジア好配当株式ファンド(年1回決算型) 2 14,909.22 0.00 14,909.22 満期
パインブリッジ パインブリッジ新成長国ダブルプラス<毎月分配タイプ> 216 6,644.47 2,855.00 9,499.47 繰上
パインブリッジ パインブリッジ新成長国ダブルプラス<1年決算タイプ> 46 9,543.45 350.00 9,893.45 繰上
三菱UFJ グローバルETFオープン 948 13,149.54 1,560.00 14,709.54 繰上
三菱UFJ 国内債券通貨プラス 1,089 9,076.04 1,277.00 10,353.04 満期
AM One DIAMアジア・オセアニア・リートファンド 277 13,444.80 8,660.00 22,104.80 繰上
AM One 資本収益力日本株ファンド(3ヵ月決算型) 1 10,171.22 2,250.00 12,421.22 繰上
AM One 新光グローバル・ハイイールド債券ファンド(年1回決算型) 37 15,026.31 0.00 15,026.31 繰上
AM One ニュー トピックス インデックス 470 9,418.57 360.00 9,778.57 繰上
PGIM PRU海外債券マーケット・パフォーマー 2,862 22,129.11 0.00 22,129.11 繰上
PGIM PRUグッドライフ2030(年金) 2,035 18,598.75 0.00 18,598.75 繰上
PGIM PRUグッドライフ2040(年金) 1,556 22,013.04 0.00 22,013.04 繰上
PGIM PRUグッドライフ2050(年金) 197 25,360.19 0.00 25,360.19 繰上
ステート 日本株式最小分散インデックス・オープン 0 12,427.33 10.00 12,437.33 繰上
あいグローバル・ 米国・シェールMLP・高配当株ファンド 270 10,943.76 4,800.00 15,743.76 繰上
三井住友DS ひとくふう新興国株式ファンド 13 13,678.81 0.00 13,678.81 繰上
三井住友DS BNPパリバ・グローバル金融機関ハイブリッド証券ファンド(為替ヘッジあり) 470 8,590.01 2,555.00 11,145.01 繰上
BNY BNYメロン・新興国ソブリン・ファンド(円ヘッジ) 301 6,989.37 5,030.00 12,019.37 繰上
GCI GCIオルタナティブバスケット・ファンドV10(ラップ専用) 1 9,020.60 0.00 9,020.60 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)