日本生命保険が6月23日に、公募による投資信託の販売サービスを終了すると発表しました。大手生保で投資信託の販売を取りやめるのは初めてのことです。確定拠出年金については、これまでどおり販売が続けられます。
正直、驚きました。販売を取り止めるということは、投資信託ビジネスは儲からないし、今後も期待できないという判断だと思います。大手証券会社に勝る販売網を持つ日本生命であっても、保険の顧客のニーズに投資信託は合わなかった、つまり、投資信託で運用する変額年金保険や確定拠出年金に対するニーズは、生命保険や年金保険の延長線上に存在しても、投資信託に対するニーズはなかったということなのかもしれません。一方で、確定拠出年金の営業を縮小して、投資信託の販売に力を入れている郵便局とは反対の動きであることが興味深いところです。
さて、日本生命の投資信託総合取引口座に投資信託残高がある顧客については、岡三証券に口座移管が可能となっているということですが、岡三証券が近くにないという顧客もいるでしょうし、運用は続けたいものの、これまで取引のなかった会社に口座を開設することを望まない人も存在する可能性もあります。残高は移管できるといっても、投資家にとって、全く問題がないというわけにはいかないはずです。また、販売会社が日本生命のみで、純資産総額もかなり小さいファンドについては、今後繰上償還されるリスクも浮上してくるかもしれません。
最大手の日本生命の決定を受け、他の生命保険会社における取り扱いはどうなるのだろうかという疑問も生じます。最大手にとって厳しかった投資信託ビジネスであるなら、他の生保も同じような状況ではないかと想像してしまいます。
メーカーである運用会社の撤退とは違うとはいえ、金融商品の販売会社には、金融商品販売法に基づく責任が伴います。販売会社が撤退することで、この責任の所在も曖昧になってしまう可能性もあるのではと懸念してしまいます。運用会社を厳しい目で選択するだけでなく、販売会社を選ぶ目が必要ということかもしれませんが、販売会社の倒産とは異なり、今回の決定は企業の経営方針によるものであり、投資家にとっては予想が不可能な部分。投資家側に打つ手はないのです。